(相談事例)収益を生まない自宅が広い場合 ②納税について
Ⅰ 納税について
今回の事例(※こちらの事例)の場合は既に子(丙)の自宅が建っている土地については賃貸アパートを建築することは出来ません。預金の少ないとの事ですので納税が発生する場合は納税資金が不足してしまう事になります。
納税資金を用意する方法としては通常以下の方法が考えられます。
1 相続財産で売却できるものがあれば換金する
2 相続人が金融機関より借入をする
3 延納(分割納税)により納付する
4 物納(相続財産で納付)により納付する
1 相続財産の売却による納付
相続財産を売却して現金化し、それを納税資金にします。
上場株式の様に、すぐに現金化できるものを優先的に売却されることをおすすめいたします。
早急に不動産の売却を望む場合には、売却金額が相場より低くなり得ることや、売却手続きに時間を要するため、相続開始から10ヶ月以内という納税期限に間に合わない可能性があることを考慮して下さい。
また、財産を売却して得た利益は譲渡所得となり、所得税がかかります。
従いまして、納税に充てる場合は所得税の納税分を残しておく必要がありますので注意が必要です。
売却する財産の選択、売却した後の所得税の対策が重要になる準備方法ですが、納税資金がない場合に取る選択肢としては一番に考えることとなります。
2 金融機関からの借り入れによる納付
税金は納付期限を過ぎると、加算税や延滞税がかかってしまいます。これが非常に高率ですので、場合によっては銀行へ利息を支払ってでも借入をして支払った方がいいという事もあります。
デメリットとしては、納税目的での借入は基本的に審査が厳しいことや、担保が必要な場合には担保設定費用がかかってしまう等がありますので、下記3の延納と比較して決めていくと宜しいかと思います。
3 延納のよる納付
税金は現金一括納付が原則となっていますが、次に該当する場合には相続税を分割で納付することができます。
- 金銭で一時に納付することを困難とする事由があること
- 相続税額が10万円を超えること
- 延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること
(注)但し、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保を提供する必要はありません。- 延納申請書を税務署へ提出し、その許可を得ること
デメリットとしては、延納には利息の代わりとして延納利子税がかかります。
延納利子税の利率は、相続財産の種類や延納期間によっても変わってきます。
申請時点での利率を税務署にご確認いただき、銀行から借り入れをした場合と比較をして頂ければと存じます。
4 物納による納付
次に該当する場合には相続税を取得した相続財産(=物)で納付することができます。
- 延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があること。
- 物納に充てることが出来る財産は種類が決まっていること。
主に以下の財産となります。
(第1順位)
不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等
(第2順位)
非上場株式等
(第3順位)
動産
(注)物納に充てることが出来る財産は第1順位が優先されその後第2順位、第3順位となります。- 物納申請書を税務署へ提出し、その許可を得ること。
デメリットとしては、物納に充てる財産の相続税評価額により納付することになりますので、実際の市場価値よりも低くなる可能性があります。
物納しようとしている財産が売却できるのであれば、先に売却を検討頂くと良いと思います。
以上の様に、相続開始後に納税資金が不足すると非常に困難な状況となりますので、納税が発生しそうな場合は早めに専門家と相談し生前より準備をしておくことが非常に大事となってきます。