配偶者居住権で2次相続の相続税を節税できる!
配偶者居住権の概要については以前に紹介させていただきました。
詳しくはこちら
今回は配偶者居住権の課税についてのご説明です。
1 配偶者居住権で相続税が節税できる!
配偶者居住権は以前お伝えした通り、自宅を居住する権利と所有権に分けることを言います。
実際に相続税を計算するときには、自宅について配偶者が居住する権利を取得して、子供が所有権を取得するようなことができます。
なぜ、相続税が節税できるのでしょうか?
それは、配偶者が取得した「配偶者居住権」は、その配偶者が死亡(2次相続)したときには相続税がかからないからです。
具体例で見てみましょう
(前提)
父死亡・・相続人は妻と子の2人
相続財産は自宅(土地建物)8千万円のみ
妻が配偶者居住権を取得、子が所有権を取得した場合
1回目の相続(1次相続)・・父死亡 ※金額は仮定です。
妻の相続財産(配偶者居住権)・・・3,000万円
子の相続財産(自宅の所有権)・・5,000万円
2回目の相続(2次相続)・・妻死亡
通常であれば、妻の配偶者居住権に相当する3,000万円が相続税の課税対象となるところですが、配偶者居住権は妻が死亡した時点で消滅します。
よって、妻が死亡したときには自宅については課税されないことになります!
※自宅は子の完全な所有権となります。
ここが、2次相続で節税できるといわれる所以です。
小規模宅地の減額(土地の評価を8割減額できる制度)が使える!
配偶者居住権を取得した妻、所有権を取得した子も両方とも使うことができます。
※小規模宅地の減額とは・・自宅の敷地について330㎡まで80%減額できる制度です。
2 配偶者居住権の落とし穴
配偶者居住権はとてもいい制度ですが、注意すべき点もあります。
- 2020年4月1日からの制度ですので、それ以前の相続や遺言では設定できません。
- 妻が死亡する前に以下のような理由で配偶者居住権が消滅した場合には、妻から子へ配偶者居住権の贈与があったものとみなされて贈与税の課税がされます。
- 配偶者と所有者の合意で消滅した(自宅を売却する場合など)
- 配偶者が配偶者居住権を放棄した(配偶者が老人ホームへ入るなど)
- 次のような場合は贈与税はかかりません
- 配偶者の死亡による消滅
- 建物の滅失(地震などで滅失した場合など)
※自宅を売却したり、配偶者が老人ホームへ入居することになるときは注意が必要です。
※その他の活用例としては配偶者が配偶者居住権を子へ相当の対価で売却することできますので配偶者の選択肢も広がります。
→妻は譲渡所得税がかかりますので注意が必要です。
3 具体的な配偶者居住権の評価
ちょっと計算はマニアックなので、興味がある方は下記のリンク(国税庁HP)をご覧頂ければと存じます。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4666.htm
簡単に言うと、土地建物を配偶者の居住する権利と所有権に分けますが、その分け方が問題となってくるので、その計算方法が案外複雑になっています。
4 まとめ
始まったばかりの制度ですが、税金的にはかなり有利になってくると考えられます。但し、制度を理解して使わないと思わぬ不利益を被ることがあるので専門家に相談することをお勧めいたします。