名義人が未成年者である場合は名義預金に該当するの?
相続税の税務調査では、必ずと言っていいほど名義預金が問題となります。
名義預金とは、形式的には被相続人以外の配偶者や子などの親族名義で預金をしていますが、実質的には被相続人のもので、親族の名前を借りているに過ぎない預金を言います。
相続税においては、名義預金と判断されて場合は被相続人の財産として課税の対象となってきます。
よって税務署は被相続人の預金口座だけではなく、ご家族名義の預金口座は調査してきます。
例えば以下のような場合はどうでしょうか?
【事例】
被相続人:父
相続人:母、子(3歳)
子(未成年)名義の預金口座がありましたが、資金源は被相続人である父でした。
この場合、子の名義の預金は父の名義の預金として相続財産となるのでしょうか?
【回答】
子はまだ幼いですが、親権者や未成年後見人等の代理が贈与を受けた意思を持って、証書や印鑑を管理していれば子に帰属する預金ということが出来ます。
【解説】
相続開始時に3歳の子名義で数千万円の預金がある場合、通常3歳の子供は無収入ですので、父から贈与されたものか、名義を借りているだけなのかどちらかが考えられます。
贈与成立の要件
贈与行為とは民法549条で以下のように定められています。
贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる
簡単に言うと以下の条件を満たす必要があります。
条件①贈与者は相手に財産をあげるという意思表示すること
(認知症など意思表示ができない場合は不可)
条件②財産をもらう人が、財産をもらうという意思表示をすること。
条件③財産をもらった人が、もらった財産を自由に処分できる状態であること。
※意思表示を表すためには「贈与契約書」を作成しておくことをお勧めいたします。
未成年に対する贈与
未成年者については、民法5条で以下の通りに定められています。
- 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
- 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
- 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
簡単に言うと、未成年者は贈与の意思表示をすることが法的に認められていないので、法定代理人(一般的に親権者である父母)が代わりに意思表示をすることになります。
今回の事例
上記の内容に照らして、未成年者であっても母が贈与を認識し口座を管理することによって贈与の要件を満たせば、未成年者がである子が贈与の事実を知っていたかにかかわらず贈与契約は成立すると解されています。(平成19年6月26日裁決)