【相談事例】生前に相続時精算課税贈与と住宅取得等資金贈与の非課税を受けた場合の、贈与者が死亡した場合の相続税について

概要

甲さんは令和7年12月に亡くなり、長男のAさんは相続により甲さんの相続財産を取得しました。Aさんは、令和4年9月に甲さんから現金3,000万円の贈与(贈与①)を受け、同年10月にその全額を充てて分譲マンションを取得し、居住を開始しています。Aさんは、令和4年分の贈与税について、以下の特例の適用を受け贈与税の申告をしています。また、Aさんは令和7年8月にも甲さんから2,000万円の贈与(贈与②)を受けております。

令和4年9月 贈与①
現金3,000万円
(相続時精算課税贈与・住宅取得等資金)
令和4年10月 居住開始
分譲マンション
取得・居住
令和7年8月 贈与②
現金2,000万円
(相続時精算課税贈与)
令和7年12月 相続発生
甲さん逝去
相続税申告対象

令和4年分の贈与税課税価格(贈与①)

3,000万円-2,500万円(注1)-500万円(注2)=0円
贈与税額:0円

(注1)相続時精算課税の選択による特別控除額
(注2)住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税額

相談内容

上記の場合において、Aさんが甲さんから贈与を受けた現金3,000万円(贈与①)と現金2,000万円(贈与②)のうち、甲さんに係る相続税の計算上、課税価格に加算すべき金額はいくらになりますか?

回答

以下の金額の合計額となります。

1.甲さんの相続税の課税価格に加算される金額

(1)令和4年分・・3,000万円―500万円=2,500万円
Aさんが贈与を受けた3,000万円のうち、(注2)の非課金額500万円を除いた2,500万円となります。

(2)令和7年分・・2,000万円―110万円(注3)=1,890万円

(3)(1)+(2)=4,390万円

(注3)令和6年1月1日以降の相続時精算課税に係る贈与については基礎控除額が各年110万円あります(措法70条の3の2)

贈与年 贈与額 非課税・基礎控除 精算課税適用額 相続税への加算額
令和4年 3,000万円 ▲500万円(住宅) 2,500万円 2,500万円
令和7年 2,000万円 ▲110万円(改正) 1,890万円 1,890万円
合計額 5,000万円 4,390万円

令和4年の贈与税申告時に課された贈与税がある場合は相続税額から控除をすることが出来ます。令和7年度の贈与は甲さん死亡年の贈与のため贈与税の申告は不要となり相続税のみの申告となります。

2.解説

(1)相続時精算課税の贈与者が死亡した場合の相続税

相続時精算課税制度は、その年の1月1日時点で18歳以上である個人が、その年の1月1日時点で60歳以上である父母又は祖父母から財産の贈与を受けた場合、贈与税の申告期限までに「相続時精算課税選択届出書」を贈与税の申告書に添付して納税地の所轄税務署長に提出したときに選択できる制度となります。(相法21条の9)。
相続時精算課税に係る贈与者(甲さん、以下「特定贈与者」という)が死亡した場合、相続時精算課税の適用を受けた受贈者(Aさん)の相続税は、次の①+②の価額の合計金額を課税価格として相続税額を計算します(相法21条の15)。

①特定贈与者から相続又は遺贈により取得した財産の価額(基礎控除(上記注3)後の金額)
②特定贈与者の死亡の時までに特定贈与者から贈与を受けた相続時精算課税の適用を受けた贈与財産の価額(=贈与時の価額)

この場合、②の対象となる贈与財産は、その贈与による取得の日の属する年分の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるものに限られます。このため、上記(注2)の非課税のように一定の金額を贈与税の課税価格に算入しない規定(非課税)の適用があった場合、その非課金額は贈与税の課税価格計算の基礎に算入されないので、②の対象とはなりません。よって特定贈与者に係る相続税の課税価格に加算されません(相法基通21の5−1)。

(2)本事例に対する考え方

上記(1)より、Aさんが令和4年及び令和7年に甲さんから贈与を受けた現金3,000万円と2,000万円のうち、甲さんの相続に係る相続税の課税価格に加算すべき価額について、令和4年は贈与税の課税価格の計算の基礎に算入されなかった非課税金額の500万円を除いた2,500万円(基礎控除は令和6年からとなりますので令和4年はありません)、令和7年は2,000万円から基礎控除額である110万円を控除した残額1,890万円となります。よって、甲さんの相続に係る相続税の課税価格に加算される金額は2,500万円+1,890万円=4,390万円となります。

3.実務でのポイント

(1)住宅資金贈与の非課税金額は相続財産への加算なし

「住宅取得等資金の贈与税の非課税(措法70条の2)」の適用を受けた金額は、相続時精算課税による生前贈与はもとより、相続開始前3年(令和6年以降の贈与は最大7年)以内の贈与(暦年贈与)であっても、相続財産に加算する必要がない点が、この事例の重要なメリットです。

相続財産への持ち戻しの価額

相続時精算課税を適用した財産は、相続時の時価ではなく、「贈与時の時価」で加算します。本事例は現金(3,000万円・2,000万円)であるため変動はありませんが、贈与財産が不動産等の場合は重要なポイントとなります。

(2)贈与税額控除

令和4年分で仮に特別控除(2,500万円)を超えて贈与税を支払っていた場合は、その贈与税額を相続税額から差し引くことができます。また、支払いすぎた分(相続税より贈与税が多い場合)は還付を受けることも可能です。

(3)注意が必要な「死亡年の贈与」の取扱い

令和7年(死亡年)の贈与については、上記の回答の通り贈与税の申告は不要ですが、相続税の申告において相続時精算課税制度を適用した財産として漏れなく計上する必要があります。
特に、令和6年からの基礎控除110万円があるため、「2,000万円すべてを加算するのか、基礎控除後の1,890万円を加算するのか」という点は非常に間違いやすいポイントですが、回答通り「1,890万円(基礎控除後)」を加算するのが正解です。

この記事を書いた人
あさひ税理士事務所/池袋相続相談センター
代表税理士 千葉実

あさひ税理士事務所代表
税理士事務所勤務時代より法人・個人・相続と様々な業務を経験しており、特に相続関係については、おおよそ20年の経験の中で多くのお客様から高い信頼を頂いております。当事務所の特徴としては大手事務所にはないフットワークの軽さや相続専門税理士が誠実にお客様に寄り添いながらご対応させて頂くことです。
2019年に池袋相続相談センターのホームページを公開し、司法書士と共同で連携をとることにより相続に関する様々な事の無料相談をお受けしております。年間相談件数は80件以上。相続税に限らず、遺言書作成、預金・株式・不動産等の名義変更、生命保険の解約手続き、相続放棄まで一つの窓口で完結できる体制を整えております。

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