(相続相談事例)子供がいない夫婦の相続について

子供がなく、夫と2人で暮らしてきたA子(妻)さんは夫がガンで余命宣告を受けました。
そんな生活の中、このまま夫が亡くなってしまった場合に遺産はどうなるか心配になりました。

「2人で築いた財産なのに、仲の悪い夫の兄弟にわたってしまうことがあるのだろうか・・」
と言ったご相談でした。

1 子供がいない夫婦の相続人

配偶者が死亡した場合の相続人は、「配偶者と親」、親がいない場合は「配偶者と兄弟」となります。今回のご相談では親は既に死去しているため相続人は「配偶者と兄弟」となります。

この場合の民法で決められている法定相続分は配偶者が3/4、兄弟が1/4となっております。

2 遺言書がない場合

遺言書がない場合、夫が死亡した場合の相続人は「A子さん(配偶者)と夫の兄弟」となります。遺言書がない場合には、相続人全員で「遺産分割協議」を行って財産を分ける必要があります。相続人の1人でも納得できない人がいる場合には財産を分けることができません。

従いまして、普段疎遠な夫の兄弟と連絡をとって場合によっては遺産を兄弟へ分けないと遺産分割協議が纏まらないことも考えられます。

3 トラブルを防ぐには?

①夫婦で遺言書を作り交換して持っておく

子供がいない場合、夫婦で築いた財産でも遺言書がなければ上記2の通り兄弟にも遺産が渡る可能性があります。反対に遺言書さえあれば、兄弟には「遺留分」はありませんので遺産が渡ることはありません。

子どもがいない夫婦はお互いに遺産分けの意思を示した遺言書を作って渡しておくと安心です。
その際注意しておくことは、必ず遺言書に「遺言執行人」の記載をしておくことが肝心です。遺言執行者がいない場合は相続人全員の署名や押印などが必要になる場合があります。そうすると、せっかく遺言を作成したのに兄弟の合意を得る必要が出てきてしまいます。

②家族信託の利用

昨今「家族信託」という制度を使うケースも増えてきております。

家族信託は、遺言に代わるものとして利用できるからです、その他にも認知症対策で利用される場合も多いです。
今回のご相談では、遺言に代わるものとしての利用が考えられます。

遺言書では、夫が死亡したら財産はA子(妻)さんが遺産を取得しますが、A子さんが亡くなった後はA子さんが事前に遺言を書いておかないと決めることは出来ません。
家族信託であれば、夫が死亡したらA子(妻)さんが遺産を取得し、A子さんが死亡したら、お世話になっているBさんへ遺産を渡す。など2次相続以降も決めることができます。

遺言をその都度作成できればいいのですが、認知症などになると遺言書は作成できません。
それに備えて、判断能力のあるうちに遺産の分けを次の次の取得者までに決めることができます。

以下家族信託と遺言のメリットデメリットをまとめました

メリット デメリット
遺言
  • 手続が比較的簡単(主な遺言の種類)
    自筆証書遺言
    公正証書遺言等
  • 2次相続以降を決めることができない
  • 認知症になってしまうと作成できない
  • 公正証書遺言にする場合は公証人へ支払う費用が発生する
家族信託
  • 2次相続以降まで決められるので、夫婦共に認知症になった場合や、孫の代の承継にも備えることができる
  • 贈与税がかからない
  • 受託者の資質によっては(金遣いが荒い、ギャンブル依存症)など、財産を失う恐れがある
  • 手続きが煩雑
  • 認知症になると契約できない
  • 専門家への費用がかかる

この記事を書いた人
あさひ税理士事務所/池袋相続相談センター
代表税理士 千葉実

あさひ税理士事務所代表
税理士事務所勤務時代より法人・個人・相続と様々な業務を経験しており、特に相続関係については、おおよそ20年の経験の中で多くのお客様から高い信頼を頂いております。当事務所の特徴としては大手事務所にはないフットワークの軽さや相続専門税理士が誠実にお客様に寄り添いながらご対応させて頂くことです。
2019年に池袋相続相談センターのホームページを公開し、司法書士と共同で連携をとることにより相続に関する様々な事の無料相談をお受けしております。年間相談件数は80件以上。相続税に限らず、遺言書作成、預金・株式・不動産等の名義変更、生命保険の解約手続き、相続放棄まで一つの窓口で完結できる体制を整えております。

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